藤田進監修『サーバーエージェント流 成長するしかけ』【ミになる言葉まとめ】

サイバーエージェント流成長するしかけ まとめ

社員に「安心」を与える

安心の制度で最も代表的なのは、家賃補助制度の「2駅ルール」です。これは、例えば本社がある渋谷駅から2駅以内に住む場合は、月額3万円を補助するという制度。役員が面談や食事会などで声を拾ってみると「満員電車などで通勤のストレスが大きい」という社員の声が多く聞かれたようで、そうした意見をもとに社長をはじめとする役員で決定しました。

加えて、5年以上勤務した社員には、どこに住んでも5万円の補助が出る「どこでもルール」があります。当然ですが、長期雇用を支援するための制度です。

ヒトも会社も競争の原理で伸ばす

例えば、新規事業プランコンテストの「ジギョつく(事業を作ろう!の略)」です。

これは半年に一度開催され、内定者を含めた全社員が参加できます。最初は10名ほどしか参加者がいませんでしたが、2009年の開催時には167名と、サイバーエージェント単体の約20%の社員が応募するまでに増えました。

優秀な提案だと認められた場合、提案者が望むなら子会社を設立して自ら社長になることができます。また、それはハードルが高いけれどアイデアはある、という場合にはアイデアだけの募集も受け付けています。社長になろうとアイデアだけであろうと、また先輩社員だろうと内定者だろうと、グランプリには100万円が贈呈されます。

こうした「挑戦」の人事制度では「チャレンジした分だけ成長できるかどうか」が重要です。そこで提案者には、他部署も協力して優勝できるようにバックアップしつつ、たとえ優勝を逃しても、挑戦した園子悪露息を応援するように配慮しています。

社員同士のつながりを強化

退職率が高かったころは、社内に「助け合える関係が少なかった」といえます。上司と部下でも、同僚でも、「たまたま」相性が良い場合には助け合えますが、当時はそうした偶然性に頼っていただけでした。

新卒入社組は元気も良くて同期同士で助け合っていましたが、中途入社組には会社からのフォローも弱く、退職率が高止まりしていました。しかも退職願が出されるとき、その多くが上司にとっては突然の出来事でした。代謝を決めた本人としては悩みに悩みぬいての決断なのでしょうが、周りに相談できる人がいないことが問題でした。

当時の退職理由は「上司のOOさんは、私を全く評価してくれない」「面談の依頼をしても相談に乗ってくれる人がいない」など、コミュニケーションに関するものが圧倒的多数を占めていました。一度退職を願い出たら、基本的に翻ることはありませんでした。退職する社員からすると、力を貸してくれない上司への、最後の抵抗だったのかもしれません。

人事制度を試行錯誤しているうちに、その最大の原因が次第にわかってきました。それは「対話がしやすい部下には共通項が多いけれど、しかることが多かったり苦手な部下とは共通項が相対的に少ない」という上司からの情報です。そこから「社員同士の共通項を増やす」という施策をとり、退職率の改善に大きく貢献することになりました。